7.28.2013

藍に愛、酸化に讃歌(研修第四週レポート)

第四週は藍染めの週となりました。

植物から採取した粉末の天然藍を一旦還元して染液を作り、染液に入れた後に空気に触れさせることで酸化が進み着色となる藍染め方法についての詳細は、本やウェヴ上で様々紹介されておりますので、あえてこの場では記載しないことに致して、ざっと一週間(述べ4日間)の研修内容を報告いたします

藍(Indigo40%)を使い、勿忘草色、縹色(はなだいろ)、藍、紺藍、濃藍(JIS慣用名、管理人主観)といった大凡5種類の染色と、勿忘草色、縹色の藍染め糸をベースにPalo de Moraの黄色を使い草色と深緑色に施す方法を研修しました。
 

藍染めに関しては画像の通りです。(緑色系は来週)

メモ

一つ、日本語で「さばき」と呼ばれる一本一本の糸をばらす様に、ほぐしながら糸を張る作業は酸化をスムーズにさせて、ムラ染め防止のために重要な工程であり、すばやくかつ丁寧に行う必要がある。

一つ、還元状態が停滞し染色が比較的薄く見える状態になったとしても、色素が十分あれば更に還元を施すことで、先の色よりも濃い染になる場合がある。染糸二番手、三番手の際の染液の状態を良く観察する事が肝要である。

一つ、日替わりで研修生が先生役を行う方式が定着してきました。各自指導担当になることで、学ぶ意欲が向上し、内容を理解して記憶していくのが捗ります。また、ツトゥヒル語では互いに細かな点も教え合う事ができている様に窺えます。

教え合う生徒たちの様子が画像から伝わってきますね!!!
 

さて、この度の研修指導大先生であり天然染色研究家・児嶋英雄氏が中米の藍復興に貢献し、外務大臣賞を授与されたのはまったく記憶に新しい出来事ですが、復興した藍は今や隣国エルサルバドルに産業として根付いていて、師曰く「染色に使用される植物のインディゴ成分含有度ならびに均質である点においてインド産をしのぐ原料・・・」とのこと、その様な天然染原料を比較的手軽に使えることは大きな利点であり、天然藍需要の多い欧米諸国へ、染め上げ品を、また、更に手織り等にして提供してく事によって大きな恵みとなっていくと信じます。

研修生たちは一通りの基礎を学びました。
来週からは自分自身で何でも行えるように、また、見学者等に適切な説明ができるように
何度も反復練習することになります。

7.25.2013

研修第三週レポート

掲載が少々遅れました。
 
慌ただしい日々が続き、週を超えてからの報告となり、何卒ご容赦願います。
そして、中米天然染色ファンの皆様? お待たせいたしました。


研修内容

一つ、アティトラン湖周辺で栽培・収穫され、煮出してお茶として飲用する事が多いペリコン(Hypericum humifusum)と呼ばれる草花、茎部分三分の一ほどを切り落とした状態を原料に、アルミ媒染を使って綿糸を黄色に染める方法。

一つ、綿糸(未染)、カチオン化した綿糸、Iramoの実から加水分解性タンニンの強い効果を吸着して薄茶色に染色した綿糸、他にナカスコロの実で同様タンニン成分の効果を吸着して薄茶色に染色した綿糸、これら4種類の綿糸に対して、一般的に食品等にも数多く使用されるカルミン酸色素を持つカイガラムシの一種Cochinillaを原料に、アルミ媒染、一部銅媒染を使って桃色、赤、赤茶、紫、紫がかった茶色に染め、以前の研修で染めた其々の色と対比しながら評価する。

一つ、カチオン糸の作り方(但し、今のところグアテマラではカチオン剤入手不可能)

一つ、天然染色の指導者として他者へプレゼンテーションする際のトレーニング。


重要メモ

一つ、原料は必ず水から煮出す。

一つ、ムラ染めを防ぐためには、糸を染液に入れるタイミングは染液温度約60度を目安とし、糸を入れたあとは五分ごとに染液中の糸を木の棒などを使って静かに泳がせると良い。また、糸を染液から取り出した後は一旦40度ぐらいまで(掴める程度)冷やした後、「さばき」と呼ばれる作業を丹念に行なうのが良い。

一つ、Cochinilla染の染液をつくる際、二回煮出して濾した後に塩を入れ、その後、水1Lに対して5%酢酸を5ml程添加すると染色効果が高まる。

一つ、タンニンベースのCochinilla染で銅媒染を使った場合、ほぼ茶色に近い色に染め上り、Cochinillaを使う十分な効果は得られない印象を持った

その他

研修生の習得度は予想していた以上に高い。


画像 ↑Cochinilla染、↓原料にしたPericon

7.14.2013

天然染色指導者研修第二週レポート

先週の概要です。
 
初めに前週に仕上げて干して乾いた糸の色確認です。

煎じてお茶として飲むと肝臓に良いとされ、Tilo(学名Tilia platyphyllos  SCOPOLI)と呼ばれるシナノキ属の木の乾燥させた花とがくを原料に、アルミ媒染を使って何色になるかの試し染めは杏色(JIS慣用名)、ややサンゴ色にも近い感じもする可愛らしい色に染まりました。(画像をご覧ください。)

研修内容

一つ、主にペテン県に繁殖するPalo Campeche(学名Haematoxylon campechianum L.マメ科の木材カンナ屑を原料にアルミ媒染を使って綿糸を紫色に染める方法



一つ、日本でヤシャブシ(夜叉五倍子、カバノキ科、学名:Alnus firma)と呼ばれる木で、Santiago Atitlan界隈ではコーヒー畑の日陰樹として数多く繁殖するIlamoと呼ぶ木の実(加水分解性タンニンを多く含む)を原料に銅媒染を使って綿糸を鶯茶色に染める方法、銅媒染廃液の環境適応化処理について。

一つ、先週も使用したクワ科中南米植物Palo de Mora(学名Chlorophora tinctoria(L.)Gaud)と呼ばれる木材カンナ屑を原料に、銅媒染を使って綿糸を山吹色に染める方法と、銅媒染廃液の環境適応化処理について。

一つ、先週も使用したマホガニー、Caoba(学名Swietenia macrophylla King)の木材カンナ屑を原料に、アルミ媒染を使って綿糸を金茶色に染める方法

一つ、週初め冒頭に使用したPalo Campeche(学名Haematoxylon campechianum L.の木材カンナ屑を原料に銅媒染と鉄媒染を使って綿糸を黒色(紫ベース)に染める方法

重要メモ

一つ、グアテマラで購入できる綿糸にも様々あり、表面に何らかのアルカリ措置を施している綿糸については、一昼夜水道水に浸けて、その後、20回1セット洗浄を3セット行なう事で染糸に適したものに改良できる。

一つ、茶色系に仕上げる植物の成分タンニンには縮合性と加水分解性があり、主に前者は木の皮など、後者は木の実などに多く含まれていることが多く、加水分解性タンニンは水に溶けやすいので、少ない量で効率よくタンニン効果を図る事ができる。

画像 
単色糸右:Tilo、 四色糸中央:左からPalo de Mora(Al)Caoba(Cu)Palo Campeche(Al)Ilamo(Cu)、 単色糸右:Caoba(Al)

7.07.2013

一週目一蹴レポート


天然染色研修第一週目概要レポートです

前回ブログでお知らせした通り201373日水曜日
メソアメリカにおける天然染色研究家で、グアテマラ国内の天然染色研修センター設立を提唱し、今回のProfesorを務める児嶋英雄氏を中心に、サンティアゴ・アティトラン市在住ツトゥヒル族の15歳から30歳までの指導者候補研修生10名中8名とAyudante日本人2名(石川智子氏、ブログ管理人カバこと村岡貞夫/日本ラテンアメリカ協力ネットワーク:RECOM所属)のメンバーでスタートとなりました。


★冒頭のProfesorあいさつで印象深かった内容
「天然染色は薄い色と思っていたら大間違い、赤、青、黄、茶・・・中米原産の原料を使って強くて濃い、堅牢度の高い色をしっかり染める事ができると云う事を学んで欲しい・・・」(注>スペイン語→日本語訳:ブログ管理人カバ)

・・・・・

重要な事柄であり、特に記しておきたい内容です。日本でも草木染は淡い色と云うのが通説となっている様に、グアテマラに於いても、先発の試みが、着色不十分、天然染色と呼ぶには不適切な商品が流通した経緯も手伝い、淡い=天然染色のイメージが通説となる傾向にあり、原色の強い色は天然染色では無いと思っている人も数多くおります。しかしながら、こうした現状は、高品質に導く天然染色の技術、そしてその存在をアピールするために、個のマーケティング的見地からみても、この際、歓迎すべきことと考えることができます。


★指導内容
一つ、コロンビア大学の発表によるとPalo Amarillo, Mora, Fustete, Avinje, Moritaなどと、国や地方によって呼び方が数十種類もあるクワ科中南米植物Palo de Mora(学名Chlorophora tinctoria(L.)Gaud)と呼ばれる木材カンナ屑を原料に、アルミ媒染を使って綿糸を眩い黄色に染める方法。

一つ、日本では家具や楽器に使われる高級な木材として有名なマホガニー、スペイン語ではCaoba(学名Swietenia macrophylla King)の木材カンナ屑を原料、銅媒染を使って綿糸を濃い茶色に染める方法と銅媒染廃液の環境適応化処理について。

一つ、煎じてお茶として飲むと肝臓に良いとされ、Tilo(学名Tilia platyphyllos  SCOPOLI)と呼ばれるシナノキ属の木の乾燥させた花と、そのがくを原料、アルミ媒染を使って何色になるのか試し染めをする。(Ayudanteのみ)

・・・・・

過去の研修に比べて、質問もできて飲み込みも早い生徒さん達ですが暗算は苦手の様子。計算機を使わなければ数字を把握できないようです。
 

今回の画像は 実習の様子と、隣町まで船で出勤のひとコマでした。
 
染め上げて乾いた糸は後ほど紹介します。 また、来週!!!

7.03.2013

オッソーさんの研修初日メモ

天然染色指導者育成のための研修会が始まりました。
ひとこと余計かもしれませんが・・・やっとです。・・・始まりました。
 


初日の今日は研修会開校式風の関係者一連のあいさつの後、簡単なオリエンテーリング。そして早々にPalo de Moraオガクズを染色原料として、アルミ媒染を用いて、綿糸を眩い黄色に染める研修が早速始まり、予め提示していた条件に沿った比較的若年層の指導者候補生11人のうち8名(残り3名は明日から)が参加し、質問を交えて熱心にメモを取っていました。

というわけで・・・

研修内容の大筋については、以前作成したマニュアルがありますので、この場では触れない事にして、見落としそうな細かなノウハウ、「それだから奇麗に染まる」という各事柄について、忘れないためにこの場に記しておくことにします。

一つ、綿糸にも様々な種類があり、繊維改質を施した日本的にはシルケット加工(絹の様な性質を持たせること)と呼ばれる、苛性ソーダなどを用いて強アルカリ処理した擬絹糸とも呼ばれる糸は、断面から見ると繊維を意図的に三角柱に施したものであり、絹の様な光沢を持ち、平面的な部分があるため、通常繊維が毛羽立っている綿糸に比べて遥かに染まりが良く見える。

一つ、染液に糸を入れる前に必ず糸を両手でパンパンと繊維を伸ばす事は重要である。

一つ、染液で煮出して色素を浸透させた綿糸を取り出した後、静かに冷ますことにより、分子レベルで活発だった繊維上の色素行動を落ち着かせることができて、その結果、スムーズな染色定着を図る事ができる。

一つ、洗いは、たらいの水で順手、逆手交互に上から下へ絞り出すように5回ずつ、計10回、それを21セットとすると、染液取り出し後は2セット、媒染液取り出し後は3セット(但し3セット目は上から下への絞り出し7回)を目安にすると良い。

一つ、染液、媒染液、どちらにせよ漬け込んでいる綿糸を7分おき20回ずつ液中で静かに動かしてやる事により、ムラ染めの発生を抑える事ができる。

このメモは役に立つなあ・・・。

ということで、本日の画像は 熱心に受講する研修生と忠犬オッソーさんでした。