9.26.2013

つまらないお話

本日は地味で残念なお話し、つまらないお話。

9月上旬、日本からやってきた旅人に
「カバさんの染色はマヤ人のソレとどう違うの?」と質問されて
あれこれ思いついたことはありましたが、「そんなに違いはありませんが細かな部分を比べていくと違いがでてくるでしょう」と、なんとも中途半端な応えをしてしまいました。
そんなことも手伝って、隣村のマヤ人たちの染を再確認してきました。

購入後の糸の前処理ができていません。
原料の量も水の容量も目分量で、まったく図っていません。
いつの間にそうなったのでしょう先媒染になってしました。
時間も図らず適当です。洗いがしっかりできていません。
とても雑です。

そして、イタリア人デザイナーがグ国の生地を購入し、サンファンの人から習って染をしていたので仕上がりを観に行きました。

サン・マルコス村、ムラ・ムラ・ムラで、強く染まるはずの染料も随分薄く染まっています。どの様にして行なったのか確認すると、染めたいモノに対する染液の容量が極端に少ないことがわかりました。その他は前述と同様です。それと、まあ可愛そう、手袋をしないので銅媒染を扱っていて手がすっかり荒れています。

そんなわけで、確認しに行った先には適切な方法をアドバイスしてきました。

でも、簡単チャチャチャがすっかり身に着いていて、手間暇かける事をとても面倒くさそうにしていました。また、染液の容量については、たくさん入れて時間が短縮できるから、とのこと。品質無視、効率追求、手間暇かけず、チャチャチャとやってそれなりに染まって、それなりにお金になっているのです。そして、出来上がりもそれなりです。

気持ちは解らないでもないですが、効率と儲けを優先させて適当染めが横行しているのが残念です。経済的貧しさは目先の利益に飛びつきやすくしてしまいます。

そんなこんなで、あまり面白くない話なので 今回限りにしておきましょう。

画像は買って来た糸をそのまま使うわけにはいかないでしょう的画像です。下をご覧ください。ほんのちょっと水に浸けただけでこのPH・・・1.0ではなく11.0です。でも、洗わないのです。

9.20.2013

恐るべし漂白剤

以前、とても気に入っていた赤シャツを漂白剤でダメにしてしまった事をブログに書き記しました。最終的には藍の青とペリコン(お茶にする草)を合わせた緑のグラデーション・シャツに生まれ変わり、それはそれでめでたい結末を迎えたはずでした。

しかし、赤シャツに対する未練は増すばかり・・・
部屋に白い中古シャツがあったんですよー 早速! 天然染色職人は動きます。

木の実から取り出した加水分解性タンニンをベースに施して、中古に高価コチニール染料はもったいないとの理由から、極めて少ない分量で何度も根気よく染め上げて、更に時間をたっぷりかけてグラデーションを施したエンジ色シャツをほぼ思っていた通りに完成させたのです。

しかし、物語はこれで終わらなかった。
一度あったことは再びある。二度あることは三度目も・・・またしても漂白剤。

堅牢度が高いと云われるコチニール染料も極めて漂白剤には弱い、弱い、弱―い。
早朝、かのシャツを着たままシーツを漂白したのがいけなかった。あー悔やまれる。
はっと気が付くと不規則な色抜けが既に生じていました。

いえ、でも、めげずに再び色抜き・・・

頑固一徹な着色、どうも奇麗に抜けない。特に縫い合わせている部分に名残有り。
繰り返しで、少しはましになったものの、ああ、シミの様にも見える。
なんの、それではと精練を、と、3度行う・・・

きっと染を何度も繰り返したからなのでしょう、とても悲しくなってきました。
再び赤に染めたとしても、絶対に奇麗にはならない予感がしました。

さてどうする。

ふんばりました。

そんな時は天然藍。神のお告げです。
前回同様のお気に入り色使いなら問題ないであろう、との天地逆パターンで染め上げました。
Ya lo he hecho.   大正解でした。

教訓、漂白剤にご用心。藍はとことん便利だ。還暦前で赤は似合わぬ。
唯一無二なシャツである。身びいき・・・自己満足。

さて、画像は 短命だった赤シャツとその後の染直しシャツでした。

9.17.2013

ヒッピーのすすめ

ウィキペディアに「ヒッピーHippie)とは、伝統、制度などの既成の価値観に縛られた人間生活を否定することを信条とし、また、文明以前の野生生活への回帰を提唱する人々の総称、基本的に自然と愛と平和とセックスと自由を愛している。」との記述がありました。



ここグアテマラにも自他ともに認めるヒッピーがたくさん居て、そんな人々と、この地に共存しながらの印象は、既存慣習・価値観否定などと云う大それたものとはやや縁遠く、「その土地の社会環境にうまく適応しながら、無理せず見栄張らず、手に職を持ち、手の届く範囲でそれを販売して、自活する人たち」ヒッピー職人と呼ぶのが似合っているような・・・。

ヒッピー職人は、時に旅をしながら材料を調達し、自分で手掛けたモノを、観光地路上などで主に販売しています。提供品の質は個人差がありますが、中にはとても美しくほれぼれするようなモノ、完成度の高いモノがあり、人々の目を楽しませ、我儘な物欲を高いレベルで満たしてくれます。

原料を調達し、モノを創り、自作品を手の届く範囲で販売して、静かに生活していくという、そんな行為に敬意を表し、如何に素晴らしい事かを感じる昨今なのですが、片や、グアテマラ製品や原料を、厳しい規格・短期間の大量発注で、可能な限り安く買いたたき、ブイブイと海外販売する人たちがたくさん居ることを忘れてはいけません。

いえ、取り立ててそういう行為を責めるつもりはありません。輸出コストは膨大だし、移動時間もコスト、離れているので何かと雑費も嵩みます。また、できるだけ安く仕入れて、できるだけ高く売りたいのは商売の原則。自分自身も「まけてくれー」といつも訴えています。

ただ、何処とは云えませんが、貧困救済を大きく謳いながら、労力を考慮に入れると遥かに厳しい価格帯を地元の人々に要求する人たちが実在するので、目を塞ぎたくなってしまいます。ついでに云ってしまうと、フェアトレードなるものも個人的にはあまり信用していません。

海を越えて商売をすると云う行為、唯一無二なるものを提供するのならまだしも、商品競合がある場合は常に価格競争が付きまとい、数量、低コストに神経を尖らせる事になるのは当たり前で、その矛先は実際に作る人々、最先端の働き手に課せられる事が多々。私がマヤ人ならそんな事にまき込まれるのは勘弁願いたいものです。


改めて思う事です。

ヒッピー職人は自作品を手の届く範囲で動かしています。原料をブイブイ買いたたく印象はありません。(もちろん例外はあるでしょう)では、品を提供する現地の人、販売の仕事に携わる人、モノを買う人それぞれにとって、「幸多き行為」とは、いったいどちらなのでしょう・・・  
 
あれこれ想像していくと、ヒッピー職人にどうやら歩がある様に思えてしょうがないのです。まあ そもそも比べる必要は無いのですが、つまり「ヒッピーのすすめ」なのでした。

画像はそんな素敵な職人の David&Sato でした。

9.10.2013

私の孤独

これで、あなたもあこがれのフランス人・・・Avec ma solitude
フランスの国旗みたいなオールシーズン?ストールを一つ創ってみました。


サン・ファン・ラ・ラグーナの町一番の糸手紡ぎ名人のマルタさんに、マルタさんの自宅で採れた野放し綿花を粗めに糸紡ぎしてもらい、マヤ人の伝統後ろ帯機を使って手織りしたものを、サン・ペドロの自宅兼、染Cava工房で片側をペリコン下地のコチニールで染めて、もう一方を天然藍で染めました。

企業で商品開発の仕事をしていた時代に夢にまで見た
「作ったものは手から手へ」
まだ 誰の手にも渡っていませんが・・・実現まで近づきました。

ほら、昔々まだおおらかだった昭和の頃、 

ステンレスのまるい空器を持って、近所の豆腐屋さんへ豆腐を買いに行って、水槽からご主人が直接素手でボールによそってくれたあの感じ、皆さんも記憶ありませんか? 誰が作ったか解らないパッケージ入りのものではなくて、帰り道、時に飛来する小さな虫なんかチョンと取り除いたりして、そう、ご近所のあのおとうちゃんとおかあちゃんが作ったやつを、毎日食べたりしていませんでした?  

まったくもってモノは違いますが、その様なイメージなのです。
 
Manos unicas 手仕事唯一、
ブログタイトル通りで、なかなか手の込んだ良いものが一つできた様な気がします。でも、いったい誰が買ってくれるのでしょう?それとも自分で着用しますかね・・・?

勿論、
運び賃がたいへんなので、日本まで運ぶ気はさらさらありません。
この地に立ち寄って戴いた旅人や 気に入ってくれたマヤ人がお客さん・・・。

そんなひとり言をつぶやきながら、毎日、天然染に勤しんでいます。
Avec ma solitude
糸染めの合間に 次は還暦用の赤シャツ・リベンジ!

9.01.2013

染Cava物語プロローグ

ある日、米国からやってきた奇麗な赤色の使用済み麻シャツを購入。
とても気にいったので、晴れ着としてルンルン気分で頻繁に着用していました。

そして、ほんのちょっと前の出来事です。

お気に入り赤シャツを着ながら、愛犬駄犬なオソさんのお漏らし処理をぶつぶつ言いながらの作業中に、漂白剤は私の乱暴な振舞いによって白ぬけした部分を見事に作りだし、晴れ着にまったく不向きなモノとなってしまい、大変残念で悲しい気持ちにさせられました。

しかーし、私も染屋のはしくれです。染屋のCavaさん・・・染Cavaが一念発起。

赤色シャツを色抜きしたら、まばゆい黄色になって、更に別な方法で黄色を抜いて、白い地色のシャツを更に精練して、お茶として飲用するペリコンで黄色に染めて、次に天然の赤コチニールを重ねて、見事なワインレッドに染めました。これで・・・

がーん。腋部分が黒ずんでいるーー!!!

仮説ですが、米国人は腋汗に鉄分を含んでいるケースが多々あり、それにより鉄媒染的マイナス効果が発生し黒ずんだものと考えられます。確かに以前も同様ケースがありました。

それでも負けていられません 染Cava

再び色抜きをして、天然藍にペリコンを重ねてみました。(画像の通り) 

ほぼ、イメージ通りに仕上がりました。
11月から開始予定?の超限定ブランド
「染Cava」デモンストレーション用シャツ(単に自分が着るだけですが・・・)でございます。