安全・安心・素性明らか・・・
それが。当時勤めていたブランド力を持ちながら小さくも個性豊かな企業の合言葉でした。
数年前のこと、恐れ多くも私はそんな会社で製造(食品)部長、兼、商品開発チームリーダーを任せられ、商品企画・設計・生産に携わっておりました。初めに言っておきますが今も変わらず好きな会社で、そこの発酵バターは大好物の一つです。
そんな商品開発・生産に携わる身として「利潤追求する企業が安全、安心というお題目を掲げながら複雑極まる社会・大衆を相手にすることは生産行為に限りなく効率化を求めることとなり、大量生産無人化を強いる事であり、資金を必要として人を必要としない、あたかも人無き人間社会形成であって、そんな社会にどんな幸福があるのだろうか?」と思っていました。
人はあらゆる菌類を身に纏い時に製品を汚し、未熟さや脆弱精神も手伝って間違いも犯します。食品衛生上の安全安心追求には人による製造がどうやら不適切であり、無菌状態、疲れ知らず一定作業が可能な機械がソレを代わりに行い、内容は複雑多岐に亘り、複雑さは更なる複雑さを育みます。そこに冒頭の「素性明らか」と唱えてみても、果たしてそこにどんな意味があるのでしょう? と、更なる疑問が増えました。
また、どれだけの人がそんな複雑多岐に亘る工程を全て深く完全理解してコントロールできるものでしょうか?(あえてそれに立ち向かう人々、今も励む当時の同僚たちに対して尊敬の念は止みません。勿論皮肉ではありません。)最近では、原子力発電の仕組みも頭にチラつきます。
人が作りうる高度技術なるもの全てを疑い、淡々と貧困を生みだす資本主義社会に疑問を持つ者の一人、銀行、財閥が嫌いで、概ね大衆に真理なしと思っていて、資本主義が作る民主政治など全く信用していません。共産主義ではありません。ただ、幾許かの幸せ、伴侶、飯、健康、酒、医療を願うものであり、あえて表現すれば「自由・個人主義」なんだと思っています。
「染Cava」の仕事は自分一人で全て管理できます。時にミスもします。ミスも償える範囲です。手仕事を敬い手の届く範囲で関わった商品を手渡ししながら幾許かの幸せを得る作業です。
こんなこともっと早く気がつけば良かったと思うことがあります。でも、企業に属したことで自分の生きるべき範囲を知ることができました。また、早く気がついていたなら、不良仲間交友、様々な仕事の面白さ、スキーレースの面白さ・怖さ、ブラジル音楽鑑賞と演奏、そして多彩で親愛なる人々との交流、そんな刺激的で素敵な事柄を知らないまま生きていたのかもしれません。
そんな今に幸福を感じます。
一つ後悔していることは知恵や知識は大切で、知恵や知識を知るには若い方が絶対に良かったとい言う事、その一点です。
掲載画像は染Cava工房内で日中から幸せそうにゴロゴロしている可愛い居候でした。